このページをシェアする

STePPアフリカ産業職業訓練プログラム:生理の貧困と社会的偏見に挑む−エチオピアで女性の衛生と経済自立を支える職業訓練が修了

STePPアフリカ産業職業訓練プログラム:生理の貧困と社会的偏見に挑む−エチオピアで女性の衛生と経済自立を支える職業訓練が修了

UNIDO東京事務所は、日本政府の協力を得て「日本からの技術移転を通じたアフリカ・アジアにおける産業職業訓練プログラム」を展開しています。このプロジェクトは、アフリカとアジアの現地エンジニアと技術者に日本企業の技術に関する知識とスキルを身につけてもらうことで持続可能な産業開発に貢献することを目的としています。プロジェクトの詳細はこちらのページからご覧ください。

本プログラムの一環として、エチオピアでは女性の衛生課題と経済的自立の両面に貢献する「女性用吸水ショーツの縫製技術」に特化した研修を実施しました。

これは、衛生課題の解決と女性の経済的エンパワーメントの両立を目指す取り組みであり、UNIDOの推し進めるジェンダー平等の推進、女性のエンパワーメント(Advancing Gender Equality, Empowering Women)の優良事例として紹介されています。

第1フェーズ:日本での指導員研修

20241 月に実施した研修の第一フェーズでは、エチオピアの首都アディスアベバの非営利団体セラムこどもの村にて、縫製訓練などを担当している指導員2名が研修生として来日し、伊藤忠商事とBe-A Japanが共同で、女性用吸水ショーツの縫製技術に関する研修を実施しました。

研修では、製品の設計・素材選定・縫製技術に加え、コスト管理や製品検査の手法など、製品化・事業化を見据えた実践的な内容が提供されました。Be-A Japanは、女性起業家が立ち上げたスタートアップであり、女性の健康と自立を支援する製品と理念に基づいて、今回の技術提供が実現しました。

第一フェーズの様子はこちらの記事をご覧ください。

第2フェーズ: 職業訓練プログラム

日本での研修を終えた2名の指導員は、エチオピアに帰国後、職業訓練プログラムの第二フェーズにて、彼らが現地で指導員となって、技術養成のための研修をセラムこどもの村にて行いました。現地研修を実施したセラムこどもの村は、エチオピアで一人の女性の想いから誕生した非営利団体です。孤児や困難な環境にある子どもたちに教育・住居・職業訓練の機会を提供し、将来自立できる力を育てることを目的としています。

202411月から20252月にかけて、女性100名・男性14名の計114名を対象とした職業訓練が実施されました。訓練生は5つのグループに分かれ、1グループにつき1週間、16時間の研修を受講しました。訓練生は縫製技術だけではなく、吸水ショーツに適した生地の選び方や裁断の仕方、コストの管理方法等について幅広く学びました。

研修内容は以下の通りです。

【研修の目標】

  • 吸水ショーツについてと使い方
  • 型紙の見方と規格書の確認
  • 裁断用型紙作成
  • 裁断用製図作成
  • 縫製(サニタリーショーツ)
  • 完成品の検査

フェーズ2 職業訓練プログラム閉講式

2025年4月4日、アディスアベバ市内のセラムこどもの村にて職業訓練プログラムの閉講式が開催され、訓練生114名に修了証が授与されました。式典には、研修に参加した訓練生114名に加え、在エチオピア日本国大使館、エチオピア労働技能省、伊藤忠アディスアベバ駐在員事務所から来賓が出席しました。在エチオピア日本国大使館の根津俊太郎次席公使は、「女性用吸水ショーツの縫製技術の普及は技術移転にとどまらず、衛生的で繰り返し使用できる生理用品の普及により、エチオピアの女性の社会進出を後押しする意義深い取組である」と述べ、現地での研修がエチオピアの抱える社会問題の解決の一助となることを願っていると締めくくりました。

 

参加者からの声

訓練修了生のAliya Abdudin Ahmed氏は閉講式にて次のように語りました。「訓練では女性用吸水ショーツの縫製技術に加えて、仕上げた製品の検査やコスト管理といった複合的な要素を学ぶことができた。この訓練の成果を活かして、将来的には他国へも輸出できるような高品質の商品を制作したい。」

この取り組みは、単なる職業訓練を超え、エチオピアの女性たちが自らの手で社会課題を解決し、未来を切り拓いていく大きな一歩となりました。衛生的で再利用可能な製品がもたらすのは、健康や教育の継続だけでなく、「生き方の選択肢」を広げることです。技術を身につけた女性たちは、地域社会のリーダーとして次世代を支える存在へと成長していくことが期待されます。UNIDOは今後も、地域に根ざしたパートナーと連携しながら、女性たちが社会変革の担い手となるような支援を続けていきます。