UNIDO東京事務所は、日本政府の協力を得て「日本からの技術移転を通じたアフリカ・アジアの産業職業訓練プログラム」を実施しています。このプログラムは、アフリカ・アジアの現地エンジニアや職業訓練生に、日本企業が持つ技術や知識を移転し、その国の人材育成と持続可能な産業開発に貢献することを目的としています。プロジェクトの詳細はこちらのページからご覧ください。
プログラムは2つのフェーズに分かれており、第一フェーズでは現地研修の講師役となる指導員を招へいし、日本でTOT研修(Training of Trainers)を行い、第二フェーズでは、帰国した研修生が講師となって、現地で研修を展開していきます。移転する技術が持続的に現地に根付くように、日本企業が現地で人材育成を行うのではなく、現地での講師を育成するTOTスキームを採用しています。
モロッコでは、産業廃棄物の増加に伴い、廃棄物を適切に焼却処理するための設備や専門技術を有する人材の需要が高まっています。こうした課題に対応するため、UNIDO東京事務所は、本プログラムのパートナーとして中和機工株式会社を採択し、日本の無煙焼却技術や焼却炉施設の運営・維持管理にまつわるノウハウの移転と人材育成に取り組んでいます。
2025年4月、現地職業訓練をリードする研修生4名がモロッコから来日し、中和機工株式会社の指導のもと、10日間にわたるTOT研修(Training of Trainers)を修了しました。今回の研修に参加したのは、モロッコの公的職業訓練機関OFPPTから、 Environmental Engineer のMs. Lamiaa Illoul氏および Hydraulic Engineer のMr. Hicham Raji氏の2名、さらに、現地で焼却炉に関する実技研修を担当する医療廃棄物処理企業ECOES SARL社より、共同経営者のMr. Jalil Marzak氏およびDr. Ali Kettani氏の2名、計4名です。※なお、研修にかかる招へい費用の一部は、中和機工株式会社が負担しました。
研修スケジュール
2025年4月7日(月)~17日(木)計10日間
研修内容
日本の焼却技術を用いた廃棄物処理方法や無煙焼却炉の運営・維持管理技術の習得に向けて多岐にわたるカリキュラムが組まれ、理論研修と実技研修が実施されました。
- 理論研修(中和機工・外部講師による指導)
- 廃棄物の分類・品目
- 焼却炉の種類・構造・特徴・燃焼適性の廃棄物
- 焼却炉の炉内負担と能力
- 焼却の科学・無煙焼却の原理
- 焼却炉稼働時に発生する排気ガス・測定装置・日本の排気ガス規制値について
- 収集廃棄物の保管について
- 温水利用方法について
- 燃焼計算の学習、廃棄物の組成、発生排気ガスの種類、ガス量の計算
- 実技研修
- 焼却方法実演実習
- 焼却炉製造現場見学
- 焼却炉の据付技術、運転操作実習
- 清掃工場・収集運搬見学
研修の後半には、駐日モロッコ王国大使館のラシャッド・ブフラル駐日特命全権大使を表敬訪問し、研修結果について報告を行い、廃棄物処理技術に関する意見交換が行われました。最終日には、UNIDO東京事務所の村上秀樹次長と、プログラム担当の細川千奈津が中和機工株式会社を訪問し、村上次長から研修修了書が研修生に授与されました。
現地モロッコ研修に向けて
本プログラムの次の段階として、今回の研修を受けた研修生4名が講師となり、モロッコ国内にて100名以上の職業訓練生や産業人材を対象とした研修が実施される予定です。実技研修に必要な無煙焼却炉は、UNIDO東京事務所からECOES社に譲渡され、研修後も現地での人材育成と医療・産業廃棄物処理の両面に活用されます。現地での研修は2025年5月以降に実施予定です。