「本格的な冬の到来」と伝えられた、11月最後の日。一方、「2017国際ロボット展」の会場は、高速で動く小型ロボットから天井まで高くアームを伸ばす大型ロボットまで、多種多様なロボットと、それらを囲む人の渦で熱気に包まれていました。
2年に一度開催される「国際ロボット展」。今年は、過去最大規模の612社・団体が出展。参加者は、前回2015年を大きく上回る130,480人を記録しました。
UNIDO東京事務所は、同展示会への在京大使館視察プログラムを実施。28ヶ国から、5人の大使を含む45人が参加しました。
会場に到着早々、ふたつのグループにわかれた外交官たちは、装着した通訳イヤホンを頼りに、ロボットと人で埋め尽くされた会場へ。川崎重工業株式会社、かながわロボットイノベーション、農林水産省、東京都立産業技術研究センターの4つのブースを訪問しました。
最初に訪れたのは、川崎重工業のブース。日本で初めてロボット業界に参入し、今年50周年を迎えた同社・ロボットビジネスセンターの大熊敏也氏は、「今後、産業ロボットに限らず、医療、サービスロボットの分野にも注力していく上で、将来に向けて、さまざまな挑戦をしています」と解説。高齢化、人口減少の時代に、人間ができる事全てを、様々なアプリケーションでロボットが実施していくという説明に、外交官たちは聞き入っていました。
かながわロボットイノベーション(神奈川県、神奈川県立産業技術総合研究所などによる合同企画展示)の展示エリアでは、神奈川県立産業技術総合研究所 主任研究員の伊東圭昌氏が、県内の中小企業の出展をサポートしていると説明。サービスロボットのVECTOR、災害等の危険な場所で稼働するロボットを開発するコーワテック、人が入ることのできない場所に入るロボットを専門とするイクシスリサーチ、その他大和ハウス工業、小川優機製作所、ダブル技研など、グループを次から次へと様々なブースに案内しました。また、ひとつの企業が解決できない事を、複数の企業で取り組むよこはまファクトリーなど、ユニークな取り組みも紹介されました。
同じく、様々な組織・企業のブースが一堂に会した農林水産省の展示エリアでは、同省の角張徹氏が解説。日本の高齢化を着眼点に、農地集積政策を進める中、低コストの農業機械などをはじめ、ロボットが日本の農業を担う時代がやってくるという話に、一同深く頷いていました。もっとも注目を集めたのが、夜間もトマト栽培作業をこなすロボット。高齢化を課題としない国の代表達も、究極的に農作業を効率化させるアイディアであると、驚きを隠せない様子。質問が次から次へと投げかけられました。
ツアー最後の訪問先となった、東京都立産業技術研究センターのブースで「我々は技術を提供。商品化は企業がおこないます」と語ったのは、同センターの武田有志氏。現在、すでに美術館などで導入されているガイダンスを行うロボットが、「東京2020」に向けて通訳も可能となるといった解説に加え、高齢化に伴い誰でも使えるものや、失語症者向けのロボットの開発など、社会の状況を見据えた取り組みについて説明しました。
必ずしも最先端の技術が自国で必要とされているわけではない、という声が外交団から聞こえる一方で、日本のロボット技術のみならず、高齢化を見据えるなど、そのアプローチに学ぶ事が多いと語る外交官も。また、より具体的なニーズに応える中小企業の開発力にも、途上国・新興国の代表たちは熱い眼差しを向けていました。
今回初めての試みとして、展示会主催者である日刊工業新聞社によって開催された、インターナショナル・レセプションにも参加した外交団。持ち帰りたい情報が溢れていた、とロボット技術に囲まれた時間を振り返っていました。
回を重ねる毎に国際色を増す同展示会。2015年に引き続き、今回のツアーを引率した日刊工業新聞社 業務局 イベント事業部の阿部沙織氏も、「このツアー自体が、弊社の財産のひとつになっていると思っています。」と語ってくれました。
展示会概要
名 称: 2017国際ロボット展
テーマ: 「ロボット革命がはじまった ―そして人に優しい社会へ」
主 催: 一般社団法人 日本ロボット工業会、日刊工業新聞社
会 期: 2017年11月29日(水) ~ 12月2日(土)
会 場: 東京ビッグサイト 東1~6ホール
視察ツアー訪問先
川崎重工業株式会社
かながわロボットイノベーション
(神奈川県、神奈川県立産業技術総合研究所などによる合同企画展示)
農林水産省
東京都立産業技術研究センター
参加大使館・団体
アルメニア共和国、イラク共和国、インド(自動車部品製造協会(ACMA))、ウズベキスタン共和国、エクアドル共和国、カンボジア王国、コロンビア共和国、コンゴ共和国、ジブチ共和国、タジキスタン共和国、中華人民共和国、トーゴ共和国、トルコ共和国、ナイジェリア連邦共和国、バーレーン王国、ハイチ共和国、パナマ共和国、バングラデシュ人民共和国、東ティモール民主共和国、ベネズエラ・ボリバル共和国、ベラルーシ共和国、ボリビア多民族国、マレーシア(マレーシア貿易開発公社)、南アフリカ共和国、モザンビーク共和国、モロッコ王国、レソト王国、ロシア連邦